司法書士事務所の問い合わせと来所予約を、AIで軽くするとは
司法書士事務所でのAI活用とは、登記ができるかどうかの判断、書類の作成、相談への法的な回答という司法書士の独占業務を本人の手に残したまま、相続・不動産登記・会社設立の一次相談で「どの手続きに近い話か」「いつ頃までに動きたいか」「どこへ折り返せばよいか」を聞き取り、来所予約の候補を整え、手続きごとに決めておいた必要書類の一般的な案内を返すところまでを仕組みに持たせることです。
なぜ司法書士事務所では、一次相談が電話に集まって取りこぼれるのか
相談する側が手続きに不慣れで電話を選びやすく、その電話が鳴る日中に、司法書士本人が事務所にいないことが多いからです。
相続や不動産の名義変更、会社の設立は、頼む側にとって人生で一度か二度の出来事です。ところが司法書士の一日は来所面談、法務局への申請、不動産決済の立会いで埋まりやすく、少人数の事務所ではその時間に受話器を取る人がいません。夕方に掛け直すと、もう別の事務所に頼んだ後だった、という話を司法書士の方から聞きます。
もうひとつの事情は、手続きの多くに日付がついていることです。会社設立には希望の設立日があり、不動産の登記は決済日にあわせて動き、相続登記にも申請の期限が設けられました。初動が一日遅れると、依頼者は手続きより先に「間に合うのか」という不安を抱えます。
一次受けと司法書士の独占業務は、どこで線を引くのか
線は「聞いて並べる」と「判断して答える」のあいだに引きます。
この登記ができるか、どの手続きを取るべきか、書類をどう作るか、相談者の事情ならどうなるか。ここは法律で資格者に限られた仕事で、AIには一切させません。AIが持つのは、相談の種類と急ぎ具合と連絡先の聞き取り、来所の希望日時の預かり、事務所が決めておいた必要書類の案内文をそのまま返すことまでです。案内文にないことを聞かれたら、AIは答えを作らず、本人からの折り返しに切り替えます。
近縁の士業でも、扱う手続きは違います。役所への許認可を扱う行政書士事務所の受け方は行政書士事務所の問い合わせと書類案内をAIで軽くするに書きましたが、司法書士は法務局への登記と裁判所に出す書類が中心で、相談者が両者を取り違えて連絡してくることもあります。だから一次受けで「どの手続きに近い話か」を先に聞き、うちで扱う案件かを本人が一目で判断できる形にしておきます。
司法書士ならではの配慮が守秘性です。相続の相談には家族関係や財産の中身が、会社設立には資本金や役員の話がついてきます。文字の窓口で根掘り葉掘り聞く必要はなく、一次受けは用件の種類と連絡先まで、込み入った事情は本人が面談で聞く、と決めておくほうが相談者も事務所も安心です。
AI従業員に任せられる業務の例
司法書士が法務局の窓口に並んでいる午前中に届いた連絡を、戻るまで消さずに預かっておく。任せるのはその役です。
- 一次相談の用件と連絡先の聞き取り:留守番電話、メール、フォーム、LINEに届いた相談を、相続・登記・設立のどれに近いか、いつまでに動きたいか、折り返してよい時間帯の順に一覧へ並べる
- 来所予約の候補調整の下ごしらえ:希望日時を二つか三つ預かり、司法書士が予定を見てひとつ選べば返事になる形に整える。確定は本人
- 必要書類の一般的な一覧の案内:相続・登記・設立ごとに決めておいた案内文を返す。「あなたの場合に何が要るか」の判断はしない
- 進捗の一次案内:本人が更新した進捗表の範囲で「今どの段階か」を返す。審査の見通しや完了時期の判断は本人
表を見た司法書士が可否と手続きと書類の中身を決め、AIは表を埋めるところで止まります。仕組みの全体像はAI従業員のサービス紹介にまとめてあります。
導入の流れ
一件目は、外出中に出られなかった新規相談の受け止めか、来所予約の日程調整のどちらか。両方いっぺんに始めず、片方を選びます。
相談者が今使っている電話番号やメール、LINEはそのまま残し、窓口を増やしも替えもしません。必要書類の案内文は、ふだん口頭で説明している内容を15〜30分で書き出してもらい、そのまま使います。2〜14日回すうちに、聞き漏れやすい項目と案内文に足りない一言が見えてくるので、そこで順番と文面を直します。行政書士・税理士まで含めて手前の事務をどう渡すかは、士業事務所の問い合わせ・書類対応をAIで効率化するで扱っています。
よくある質問
相続の相談は「うちの場合はどうなりますか」と聞かれます。AIが答えてしまいませんか。
答えません。AIが返すのは、相続で一般的に用意する書類の一覧と面談までの流れという、事務所が先に決めた案内文だけです。誰が相続人か、どの登記が要るか、この遺言で進められるかといった個別の判断は、司法書士本人が面談で答えます。
法務局や決済の立会いで日中は事務所にいません。電話はAIが取ってくれますか。
電話口でAIが応対する形にはしません。電話はこれまで通り人が取るか留守番電話で受け、その吹き込みをAIが文字に起こして、メールやフォーム、LINEの相談と同じ一覧に並べます。
相続や会社設立の相談は、家族や財産の話が含まれます。守秘は保てますか。
一次受けで聞く項目を、手続きの種類と急ぎ具合と連絡先に固定します。財産の内訳、相続人の関係、役員の顔ぶれといった中身は文字の窓口では聞き取らず、本人が面談で直接聞く形にします。
設立日や決済日が決まっている相談は、急ぎで返したいのですが。
希望日や期限に触れた相談を一覧の先頭に置くので、戻った本人は急ぎから返せます。ただし「間に合うか」の見通しを返すのは司法書士本人で、AIは急ぎである事実を目立たせるところまでです。
司法書士が一人で、事務員もいない事務所です。それでも使えますか。
一人の事務所ほど向いています。面談に入れば電話は留守になり、法務局へ出れば午前中まるごと空きます。人を雇う前に、その留守の時間に届いた相談を預かる係だけを置く。それがいちばん小さな一歩です。
まとめ
司法書士事務所の取りこぼしは腕の問題ではなく、本人が外にいる時間と相談が届く時間が重なることから生まれます。登記の可否も書類の作成も相談への回答も、本人の仕事のまま動かさない。変えるのは、その手前で用件と連絡先を預かり、来所の候補を整え、案内文を返すところだけです。
僕は登記の申請書を書いたことがなく、ここに書いた日中の慌ただしさは司法書士の方から聞かせてもらった話がもとです。ただ、席を外している間に用件だけが積み上がる感覚なら、合同会社9Zを一人で営むなかで知っています。事業を伸ばすつもりで業務委託を何社にも広げた時期、頼む件数が増えるほど進み具合の確認と受け渡しの書類が先に膨らみ、手元に残る利益が細っていきました。委託を一社に絞り、判断のいらない受けと案内だけをAIへ渡してからは、売上の額はそのままで利益率のほうがはっきり上向いています。無料診断は15〜30分で、事務所の一日を聞きながら、預ける範囲と本人に残す範囲の境目を一緒に決めます。
診断後、AI化しやすいと判断した1業務は、簡易版のAI従業員として無料で作ります。